articles Beyond Phandalin

ファンダリン(あるいはストームレック)のその先に

Category
その他

2026年3月25日

柳田真坂樹

はじめに

冒険者の最後の一撃はドラゴンの頭蓋を断ち割り、かくして君の最初のキャンペーン・ゲームは大団円で幕を閉じた。
ストーンヒルの宿屋(あるいは竜の安らぎの修道院)でのお祝いの描写も終わり、プレイヤーたちも満足げだ。君もやり遂げた気持ちでサイコロを片付けている。
その時、あるプレイヤーが口を開いた。
「で、次の冒険はどうなるんだい?」
君の片付けの手が止まる。
――次って、もう全てのアドベンチャーを遊んじゃったけど……
尋ねてきたプレイヤーはニコニコと笑ってキャラシートを眺めている。冒険を終えてレベル・アップした今、新たな能力を使いたくてウズウズしている。
これからどうしよう、次の冒険を探さないと!

現時点の製品

現時点で刊行されているD&Dのアドベンチャーは3つある。

それぞれの特徴はリンク先を見て頂くとして、『ウィッチライト』、『ドラゴンランス』はどちらも1レベルからスタートし、10レベル近辺まで物語が続く大型キャンペーン・アドベンチャーである。『アイススパイア山の竜』や『竜たちの島ストームレック』を終えた君たちなら、これらのアドベンチャーも充分楽しめるだろう。
どちらも1レベルから始まる物語なので、成長したキャラクター(『アイススパイア』なら6レベル前後、『ストームレック』なら4レベルくらい)で始めると最初の遭遇はだいぶ気楽に進められるはずだが、いずれ充分な手応えがある遭遇になってゆく。
ただし、どちらのキャンペーンも何回かのセッションを通して物語の全貌が明らかになる大型キャンペーンなので、「気軽にあつまって、サッと遊ぶ」という遊び方には向いていない。
『レイディアントシタデル』は背景設定こそやや特殊だが、さまざまなレベル帯に対応した短編アドベンチャーのオムニバスなので、ファンダリンの村やストームレック島のあとに訪れるのにはぴったりだ。なんなら『レイディアントシタデル』という設定を使わず、それぞれのアドベンチャーをファンダリンやウォーターディープの近隣や、船に乗って旅した先の異郷で行なうことにしてもよいだろう。

ただし、どのアドベンチャーを選ぶにしろ、掲載されているモンスターや魔法のアイテムについて知るため、新たなルールブック『モンスター・マニュアル』と『ダンジョンマスターズ・ガイドブック』を手に入れて置いたほうが良いだろう。
幾つかはサイトで公開されている『DM向けベーシック・ルール』に掲載されているが、そこにあるのはデータのみなのだ。

だが先達のDMとして筆者はここで、あなたにダンジョンズ&ドラゴンズ最大の楽しさである、自作アドベンチャーの道を開きたい。
すでにひととおりの冒険行をマスタリングしてきた君になら、それが可能なはずだ。

モンスター討伐というアドベンチャー

アドベンチャーを自作する。
そう言うと、しばしば新米のDMたちは「そんな大それたコトを……」と尻込みをする。だが、それはたぶん考えているのが『ゲーム・オブ・スローンズ』のような叙事詩的な物語だったりするからだろう。けれど、壮大な物語ならばそれこそ『ドラゴンランス』を遊べばいいわけだし、最初からあれほどの量の設定を考えるのは無理に決まっている。
故に初めての自作アドベンチャーとして筆者がオススメするのはモンスター討伐だ。キメラやヒドラ、ドラゴンといったファンタジー世界ならではの大型モンスターの住処に赴いて、やっつけてくるというアドベンチャーである。
このアドベンチャーはとにかく遊びやすい。


人里を脅かすモンスターがいる。
住処はわかっていて、倒しに行く命知らずを求めている。
そのモンスターの巣穴には犠牲者たちの身につけていた宝物が残っており、倒せば名誉や賞金だけでなく、冒険に欠かせない魔法の品々、さらには次の冒険のタネも転がっているかもしれない。
そしてそれらはすべて、倒した君たちのものになる。


1セッション限りのアドベンチャーならこれで導入は充分なはずだ。


というわけで、『デラックス・プレイ・ボックス』や『スターター・セット』の次に買うべきは『モンスター・マニュアル』になる。先に述べたとおり、データだけなら『DM向けベーシック・ルール』にも幾つか掲載されているが、なんといっても『モンスター・マニュアル』には各モンスターの美しいカラー・イラストと、その生態、背景情報が山盛りになっている。
これらの背景情報をアドベンチャーに組み込むことで、ただの“モンスターとの戦闘”がアドベンチャーに変わるのだ。

討伐モンスターを選ぶ

大まかな目安として、4~6レベルの冒険者パーティ(5人編制)なら、パーティの平均レベル×1.5レベル近辺の脅威度のモンスター1体を出すと、緊張感のある戦闘になる。
モンスター1体と冒険者パーティが戦う場合、1ラウンドあたりの行動回数の差でモンスター側が押され気味になるが、それでもモンスターの大ダメージや状態異常を与える攻撃により、冒険者たちは手を焼くだろう。モンスターが伝説的アクションなど、自分のターン以外に行動できる能力を持つなら、まさに手に汗握る戦いになる。
モンスターを2体出す場合は、それぞれの脅威度が冒険者パーティの平均レベルより1~2下くらいが望ましいだろう。モンスター側の行動回数が増えること、目標が分散することは、かなり戦闘を厳しくする。
モンスター討伐のアドベンチャーにおいて、1つの遭遇で討伐対象のモンスターを3体以上出すのは、同じ行動をする相手が増え、互いにダイスを振り合う消耗戦になりがちなので避けるのが無難だ。


討伐するモンスターの脅威度が決まったら、『モンスター・マニュアル』から、該当する脅威度のモンスターをリストしよう。そしてそこからカッコ良いモンスターを選ぶのだ。
ビジュが良いヤツでもいいし、派手な攻撃手段(ブレスや石化、突撃系の大ダメージなど)を持つモンスターでもいい。DMである君が、そのモンスターの活躍シーンを、プレイヤーキャラクターを蹂躙し、そして華々しく散るシーンを思い浮かべられるかが大事だ。
『モンスター・マニュアル』には残念ながらモンスターの脅威度順リストが載っていない(『ダンジョンマスターズ・ガイドブック』に掲載)ので、一部を以下に抜き出しておいた。参考にして欲しい

* 脅威度5(1,800XP)


アース・エレメンタル
アティアグ
アンバー・ハルク
ヴァンパイア・スポーン
ウォーター・エレメンタル
エア・エレメンタル
カンビオン
グリーン・ハグ(魔女団の一員)
剣闘士
ゴーゴン
サフアグンの男爵
サラマンダー
ジャイアント・クロコダイル
ジャイアント・シャーク
シャンブリング・マウンド
ゾーン
ドラウの精兵
トリケラトプス
トロル
ナイト・ハグ
バルルグラ
バーブド・デヴィル
ハーフレッド・ドラゴンの古強者
ビホルダー・ゾンビ
ヒル・ジャイアント
ファイアー・エレメンタル
ブレイ
フレッシュ・ゴーレム
メゾロス
ユニコーン
ルモアハズの幼生
レイス
レヴナント
レッド・スラード
ローパー
ワーベア

* 脅威度6(2,300XP)


インヴィジブル・ストーカー
ヴロック
チャズミー
ギスゼライのゼルス
キマイラ
キュクロプス
クオトアの大神官
ゲイレブ・ドーア
ドライダー
ホブゴブリンの将軍
魔道士
マンモス
メドゥサ
ヤング・ブラス・ドラゴン
ヤング・ホワイト・ドラゴン
ワイヴァーン

* 脅威度7(2,900XP)


オニ
グリックのボス
シールド・ガーディアン
ジャイアント・エイプ
ストーン・ジャイアント
ドラウの魔道士
ナイト・ハグ(魔女団の一員)
ブルー・スラード
マインド・フレイヤー
ヤング・カッパー・ドラゴン
ヤング・ブラック・ドラゴン
ユアンティ・アボミネーション

* 脅威度8(3,900XP)


暗殺者
ギスヤンキの騎士
グリーン・スラード
クローカー
スピリット・ナーガ
チェイン・デヴィル
ティラノサウルス・レックス
ドラウのロルスの女神官
ヒュドラ
フォモール
フロスト・ジャイアント
ヘズロウ
マインド・フレイヤーの秘術使い
ヤング・グリーン・ドラゴン
ヤング・ブロンズ・ドラゴン

討伐モンスターを知る

モンスター討伐のアドベンチャーは目的こそ明確だが、たんにモンスターと戦闘するだけではおもしろくない。
正確に言うと、洞窟の中の広場で、お互いにダイスを振り合うだけの戦闘をしても、最初ならばある程度楽しめるだろう。自分のキャラが死にそうになり、危ないところでクリティカル・ヒットが炸裂して敵を倒す。そんなドラマチックな展開もダイスの出目によっては起こりうる。
だが、それはあくまでダイスの出目によるドラマであり、DMである君にはそれをコントロールしきれない。出目は誰にも操作できないのだから、双方が攻撃をえんえんと外し続けて退屈な時間になったり、不幸な事故で何もできずに遭遇が終わることもあり得る。
だからこそDMである君は、ただのダイスの振り合いにならない遭遇を行えるように、プレイヤーたちが創意工夫をこらせるように、状況を設定する必要がある。

モンスターの住処

モンスター討伐のアドベンチャーは、自分たちからモンスターのねぐらやテリトリーに踏み込み討伐をおこなう。
従ってDMはモンスターの住処やその周辺の状況を考え、データや処理を設定しておく必要がある。その際の最大のツールとなるのがモンスターの住居の地図である。
『ダンジョンマスターズ・ガイドブック』にも付録にてさまざまな地図が紹介されているが、残念なことに地図その物の説明はほとんどない。そこで、ここで改めてオススメの製品を紹介しよう。
『フィズバンと竜の宝物庫』である。
この追加ルール集はドラゴンとそれを取り巻くさまざまな環境、伝説の情報を集めた物であるが、第5章にて各ドラゴンの巣穴の地図が総計15枚、用意されている。
氷河の洞窟、山の頂の遺跡、湿地帯に沈みかけた塔、といったさまざまな、見ているだけでもワクワクしてくる地図が15枚である。そしてそれぞれに住処の特徴や部屋の説明、背景などが記されているのだ。
この住処の地図を使おう。
本来ドラゴンが住んでいるところに、先ほど選んだモンスターを住まわせるのだ。君が選んだモンスターが生息している地域と、同じような場所に住んでいるドラゴンの巣穴を使えば中身を変える必要もほとんどないだろう。なんなら、ドラゴンが放棄した巣穴にモンスターが住みついたことにしたって構わない。
ドラゴンの巣穴の地図は幾つかのエリアで構成されており、それ自体がダンジョンそのものだ。君はこの部屋のあちこちに、モンスターの説明文から想像した、そのモンスターの生活の痕跡や、宝物をちりばめることができる。
さらに、地図を用意することで冒険者たちは、地形を利用してモンスターから隠れたり、遮蔽を得て戦闘を有利に進めることができる。
冒険者たちが巣穴に踏み込んで初めてダンジョンの地理を知るのでも良いし、事前に情報を集めて地図(過去に挑んだ者が持ち帰ったのだ)は手に入れていることにしても良い。その場合、冒険者たちは地図を使って、計画的にモンスター討伐を行なうことができるだろう。
モンスターにとっても地形は有効だ。モンスターにも【知力】や【判断力】はある。影に隠れて冒険者を待ち伏せしたり、遮蔽物に隠れて遠隔攻撃をしたりするだろう。その場合、冒険者たちは注意深く巣穴を一歩一歩進んだり、モンスターをおびき寄せたりすることに頭をひねることになる。

冒険者の準備

冒険者たちは、討伐するモンスターについて出発前、あるいはフィールドで情報を収集し、準備を整える必要がある。
討伐するモンスターについての情報を、事前にどれだけ伝えるかはDMが判断してよいだろう。辛うじて生き延びた者や、襲撃の場に残された痕跡からわかることもあるはずだ。例えば、襲ってきたものがどのくらいの大きさだったか(モンスターのサイズ分類)、どんな見た目をしていたか、噛みついてきたのか爪で切裂かれたのか、特殊な攻撃を行なったならそれがもたらした痕跡(炎のブレスを吹いたなら、あたりが焼け焦げているなど)。
生存者の証言は必ずしも事実とは限らないが、意識的に嘘をついてはいないだろう。
一方で、現場に残された痕跡は、適切な技能や呪文、クラス特徴を使うことで多くの情報を与えてくれる。〈医術〉技能で犠牲者が毒を受けていることを知れば、耐毒剤を用意しておくのは名案だ。炎を吐く相手なら、ウィザードやクレリックはプロテクション・フロム・エナジーの呪文を用意するはずだ。
巣穴の地形がわかっているなら、冒険者たちが逆にモンスターに罠をかけることもできるだろう。
獣罠や小さな金属球はモンスターの移動を阻害し、冒険者につけいる隙を作ってくれる。油や可燃物をたくさん持ち込んで、煙で燻す、なんてこともできるかも知れない。
巣穴が湿地や水中にあるなら、ウォーター・ブリージングウォーター・ウォークといった呪文の有無が生死を別つ。

冒険のイメージ作り

モンスター討伐というテーマは映画やコミック、小説、ゲームでこれまで数多く扱われており、それらがすべて君の冒険のイメージ元になる。
そして、そのイメージを君は、モンスターのデータや背景情報、住処の地図といった情報で具体化できる。
君が具体化した、そのモンスターの住処や襲撃の情報、生き延びた者の証言や残された痕跡を、想像をこらして描写しよう。するとプレイヤーたちは、君の描写に基づいて、討伐計画を立て始めることだろう。
情報を出し惜しみしないこと! 何もわからないところにいきなり炎を吹きかけられるより、「話には聞いていたが……!」とブレスを受ける方がプレイヤーは喜ぶハズだ。
だが同時に、何もかも情報を開示して、最終決戦がただの手順にならないようにすることも大事だ。「何かまだあるかも」程度のほのめかしでもいい、プレイヤーに一抹の不安を与えておこう。
そうすれば一刻も早くモンスターを黙らせようと、彼らも必死になるはずだ。

次の冒険へ

1回限りのモンスター討伐セッションを何回か遊んだなら、DMである君はそろそろ「もっとバリエーションがほしい」と思うはずだ。例えば、モンスターの住処に罠や溶岩の海を置いたり出来ないだろうか、冒険者たちが手に入れる宝物をもっと豪華に出来ないだろうか、モンスターの情報を集めるホームタウンをもっと詳しく設定したい等々。
そうなったなら、ここで改めてコア・ルール最後の一冊『ダンジョンマスターズ・ガイドブック』を手に取るときだ。
このルールブックには、君が自分でアドベンチャーを作る際に知りたいことがすべて記されている。そして、その情報は君がこれから先、D&DだけでなくあらゆるTRPGを遊ぶ上で役に立つ情報だ。


改めて、ダンジョン・マスターの道へようこそ。
君の前には、これまで以上の冒険が拡がっている。一緒に楽しもう!!

一覧に戻る